NYに住んでいた頃、とてもよくしてくれた友人がいます。その友人がFacebookでシェアしていた、認知症についての「お願いリスト」を読んで、胸に残るものがありました。
「もし私が認知症になったら、こうしてほしい」。22の願いを、家族や友人に向けて綴ったものです。書き手は不明で、世界中でシェアされ続けている文章だそうです。
私は医療従事者として、認知症とともに生きる方やご家族と日々接しています。このリストには、現場で大切にしたいことが、当事者の言葉で書かれています。そして、これは介護の話にとどまらず、人と人がどう向き合うかという話でもあると感じました。
英語の原文と、私なりの日本語訳を並べて載せます。原文の静かな響きも、あわせて味わってもらえたら嬉しいです。
01
Every time you enter the room, announce yourself: “Hi, it’s ……” Never ask, “Do you know who I am?” That causes anxiety.
部屋に入るときは、毎回自分から名乗ってください。「こんにちは、○○だよ」と。「私が誰かわかる?」とは決して聞かないで。その質問は、私を不安にさせます。
02
If I get dementia, I want my friends and family to embrace my reality.
もし私が認知症になったら、友人と家族には、私の現実をそのまま受け入れてほしい。
03
If I think my dead friend is still alive, or if I think we’re visiting my parents for dinner, let me believe those things. I’ll be much happier for it.
亡くなった友人がまだ生きていると思っていても、両親の家に夕食に行くのだと思っていても、そう信じさせておいてください。そのほうが、私はずっと幸せです。
04
If I get dementia, don’t argue with me about what is true for me versus what is true for you.
もし私が認知症になったら、私にとっての真実とあなたにとっての真実について、私と言い争わないでください。
05
If I get dementia, and I am not sure who you are, do not take it personally. My timeline is confusing to me.
もし私が認知症になって、あなたが誰なのかわからなくなっても、自分のことのように傷つかないで。私の中の時間の流れが、こんがらがっているだけなのです。
06
If I get dementia, and can no longer use utensils, do not start feeding me. Instead, switch me to a finger-food diet, and see if I can still feed myself.
もし私が認知症になって、箸やスプーンが使えなくなっても、すぐに食べさせようとしないで。手でつまめる食事に切り替えて、自分で食べられるかどうかを見ていてください。
07
If I get dementia, and I am sad or anxious, hold my hand and listen. Don’t tell me that my feelings are unfounded.
もし私が認知症になって、悲しんだり不安になったりしていたら、手を握って話を聞いてください。「そんなことないよ」と、私の気持ちを打ち消さないで。
08
If I get dementia, I don’t want to be treated like a child. Talk to me like the adult that I am.
もし私が認知症になっても、子どものように扱われたくありません。私は大人です。大人として話してください。
09
If I get dementia, I still want to enjoy the things that I’ve always enjoyed. Help me find a way to exercise, read, and visit with friends.
もし私が認知症になっても、ずっと好きだったことを楽しみたい。体を動かすこと、本を読むこと、友人と会うこと。その方法を一緒に探してください。
10
If I get dementia, ask me to tell you a story from my past.
もし私が認知症になったら、昔の話を聞かせてほしいと、私に頼んでください。
11
If I get dementia, and I become agitated, take the time to figure out what is bothering me.
もし私が認知症になって、落ち着かなくなっていたら、何が私を困らせているのか、時間をかけて探ってください。
12
If I get dementia, treat me the way that you would want to be treated.
もし私が認知症になったら、あなた自身がしてほしいように、私に接してください。
13
If I get dementia, make sure that there are plenty of snacks for me in the house. Even now, if I don’t eat, I get angry, and if I have dementia, I may have trouble explaining what I need.
もし私が認知症になったら、家にはおやつをたくさん置いておいてください。今でも、お腹が空くと私は怒りっぽくなります。認知症になったら、何がほしいのかをうまく説明できないかもしれないから。
14
If I get dementia, don’t talk about me as if I’m not in the room.
もし私が認知症になっても、私がその場にいないかのように、私のことを話さないでください。
15
If I get dementia, don’t feel guilty if you cannot care for me 24 hours a day, 7 days a week. It’s not your fault, and you’ve done your best. Find someone who can help you, or choose a great new place for me to live.
もし私が認知症になっても、24時間365日、私の世話ができないからといって、罪悪感を持たないでください。あなたのせいではないし、あなたは精一杯やってくれました。助けてくれる人を見つけるか、私が暮らすための素敵な新しい場所を選んでください。
16
If I get dementia, and I live in a dementia care community, please visit me often.
もし私が認知症になって、施設で暮らすことになったら、どうかたくさん会いに来てください。
17
If I get dementia, don’t act frustrated if I mix up names, events, or places. Take a deep breath. It’s not my fault.
もし私が認知症になって、名前や出来事や場所を混同しても、いらいらした態度を見せないで。深呼吸をひとつ。私のせいではないのです。
18
If I get dementia, make sure I always have my favorite music playing within earshot.
もし私が認知症になったら、いつも耳の届くところで、私の好きな音楽を流しておいてください。
19
If I get dementia, and I like to pick up items and carry them around, help me return those items to their original place.
もし私が認知症になって、物を手に取って持ち歩くようになったら、それを元の場所に戻すのを手伝ってください。
20
If I get dementia, don’t exclude me from parties and family gatherings.
もし私が認知症になっても、パーティーや家族の集まりから、私を外さないでください。
21
If I get dementia, know that I still like receiving hugs and plenty of laughing.
もし私が認知症になっても、ハグをされること、たくさん笑うことが、私は変わらず好きだと知っていてください。
22
If I get dementia, remember that I am still the person you know and love.
もし私が認知症になっても、私はまだ、あなたの知っている、あなたの愛しているその人のままだと、忘れないでください。
この文章の最後には、こう添えられていました。認知症の人を介護することは、少しずつその人を失っていくこと。診断のとき、症状が進むとき、そして最後のとき。だから「いちばん長いお別れ」と呼ばれるのだと。
けれど22番目の願いは、その長いお別れの間もずっと、「私はまだ、あなたの知っている私のままだ」と語っています。姿や記憶が変わっていっても、その人の本質は失われない。私が日々の中で信じていたいことが、そこに書かれていました。
1番目の「部屋に入るときは名乗ってください」は、認知症の方に限らず、誰に対しても優しい習慣だと思います。相手に思い出す負担をかけない。小さなことですが、今日から真似できることです。
※ 原文はFacebook上で広くシェアされている作者不詳の文章です。日本語訳は当サイトによるものです。訳の誤りがあればお知らせください。

コメント